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〒420-0839 静岡市葵区鷹匠1丁目5番1号
NEUEZEIT(ノイエツアイト)4階
新会社法の施行によって、設立時の費用(定款認証代金や登録免許税額)が出資金額を超えるような時は、資本金0円の株式会社を設立することが可能になりました。
しかしながら、資本金0円の会社では特別な技術を有し、将来、発展可能な一部のベンチャー企業を除き、取引先や銀行が相手にしてくれないでしょう。
会社を経営するとなると、少なくとも資本金が1000万円位ないと円滑な事業展開はできないでしょう。なお、株式会社を設立するには公証人の定款認証料5万円、公証人が保存する定款原本の印紙税4万円、設立登録時の登録免許税(最低額15万円)がかかります。
当事務所に株式会社設立を依頼すると手数料がかかりますが、具体的には当事務所の報酬例をご参照下さい。
取締役が、その任務を怠ったときは会社に対し、その任務を怠ったことによって発生した損害を賠償する責任を負わなければなりません。あなたの場合、経営上、任務を怠った行為がなければ会社に対して何らの責任を負いません。
取締役がよく責められる例は、会社の債権者等の第三者からですが、これも職務を行うについて、あなたに悪意、重過失がなければ第三者に対し損害賠償する必要はありません。
いずれにしましても、普通に経営に関与してきたのに倒産したような場合には道義的に責められることがあっても、法的な責任を負うことはありません。
取締役は3ヶ月毎に1度は一堂に会しなければなりませんが、その他は書面による持ち回りでも、電子メールでも決議は可能です。
ただ、この場合も、定款に持ち回り決議ができる旨の規定があること、取締役全員が取締役会決議の目的事項に同意していること、監査役のある会社では、監査役が持ち回り決議に異議を述べないことが条件となります。
経営に関する重要な事項は、取締役全員が面と向かって、合議で決めた方が無難だと思います。
新会社法により、株式会社に必ずしも取締役会を置かなくてもよいことになりましたので、取締役会が形式的になっている会社は、廃止を検討した方がよいと思います。
取締役会の廃止は、定款変更事項ですので、株主総会の特別決議によることとなります。
新会社法でも旧会社法と同じく取締役は2年、監査役は4年と、その任期が定められています。但し、中小企業のような非公開会社は定款に定めれば、取締役、監査役とも、その任期を10年まで延長することができるようになりました。
互いに信頼できる気心の知れた者が役員である場合、その任期を10年に延長した方が、役員変更登記料の節約になるかもしれません。但し、10年間という期間は長いですから、その間、取締役間に争いが発生することも考慮に入れなければなりません。
※例
私は中小企業を経営していますが、2人の男の子がいます。私は長男に期待しており、次男に会社の株式を相続させたくありません。遺言以外に次男に株式を相続させない方法がありますか?
新会社法は、譲渡に制限のある株式を相続その他の一般承継によって取得した者に対し、定款の規定があれば自社に売渡すことを請求できる権利を認めました。相続の発生後、株主総会の特別決議により、あなたの会社は次男に対し、相続した株式の売渡しを請求でき、次男はこれを拒否できません。この場合、次男は特別決議に加わることができません。
売渡し価格で合意できない場合、裁判所の非訟手続によって裁判官に決めてもらうことになります。もっとも、会社は相続があったことを知った日から1年を経過すると売渡し請求ができなくなります。
現在、定款にこのような定めがない場合、株主総会を開催し、特別決議により定款を変更する必要があります。
M&Aは大企業が事業の多角化や競争力の強化の為に用いていますが、この手法は決して大企業の為にあるのではなく、中小企業にも関係があります。後継者のいない中小企業の経営者は企業の存続と相続税対策に頭を悩ませているものと思われますが、この問題を解決するのにもM&Aは最適の手法です。
東証マザーズ等の新興株式市場に株式を上場することができれば、上にあげた二つの問題はすぐに解決しますが、ほとんどの中小企業の場合、株式公開は無理だと思われます。
一番現実的な方法は、会社の株式全部を適価で他人に譲渡し、その人に会社の経営を委ねることですが、事業内容がよいか、もしくは、特別な技術を有している場合でないと、なかなか株式の譲渡による事業承継はできません。
さらに、株式を交換するということも考えられます。100パーセントの株式を有する中小企業の創業者が、上場している他社に全株式を提供するのと引き換えに、それと同価値のその会社の株式を譲り受けるという手法です。
これにより、その中小企業は上場会社の完全子会社ということになりますが、企業は存続し、従業員の雇用をも守ることが可能になります。
又、株式を譲渡した創業者は流通性のある上場会社の株式を有することになるので相続税対策にもなります。流通性のない株式を有していると税務署から思いがけず高く評価され、相続人が相続税の支払いにも困る場合があるからです。
その他にも中小企業の事業承継の方法があり、当事務所でも大切な業務として取り扱いをしていますので、お気軽にご相談下さい。
M&Aはマージャー・アンド・アクイジションの略称ですが、「合併と買収」と訳されています。会社はいつでも売れるわけではなくタイミングがあります。一般的には会社の業績がよく安定経営を続けている時が最適ですが、業績が悪化していれば売ることはできないでしょう。
又、会社を買う場合もいつでもというわけにはいきません。資金に余裕があり、会社が安定経営を続けている時が最適です。自分の会社の経営が悪化している時期に買収するのは、たとえ、まだ会社内に余裕資金があったとしても危険です。
買収した会社には何かと資金が必要になり、自分の会社の業績が悪い時には資金の流出が経営悪化要因になるからです。
会社を買うことは動産や不動産を買うのと違って、とても難しいことだと思います。中小企業の大半は株式を公開しておらず有価証券報告書のような開示書類がなく、会社の実態を正確に把握することがなかなか難しく、会社を買った後に簿外債務が出てきたときには大変な事態になります。
その為に会社を買収する側は弁護士や公認会計士等の専門家に依頼して、相手先企業の経営内容を慎重に調査しなければなりません。
調査の重点項目は、上記の簿外債務の外に、保証債務、税務リスク(脱税等)、労働問題(従業員との間に労働条件をめぐるトラブルがあるか否か。)、環境問題(土壌汚染等)、人材、取引先の内容と継続性、法務問題(他社と訴訟をしていないか)等、多岐にわたり、なかなか神経を使います。
このように会社を買うことはリスクがありますので、安易な態度は慎まなければなりません。
新興企業株式の市場である東証マザーズへの上場基準には確定的な売上高はありません。高い成長の可能性を有していると評価された事業の売上高が上場申請日の前日までに計上されていることで足りるとされています。
東証マザーズが確定額を求めないのは、ベンチャー企業等の上場を目的とした市場であるから、すでに達成された事業の成果である売上高の基準値は求めず、その企業の成長性に重点をおいているからだとされています。
但し、上場前の売上高が1億円に満たない場合(利益額がプラスである時を除く。)には、上場日に事業計画の概要を開示しなければならないことになっています。
その中で売上高に係る上場廃止基準(売上高1億円未満)に該当しない見込みであることを示す売上高、または、売上高及び利益の額の水準の推移の計画、並びにそれらの策定根拠となった前提条件を記載する必要があります。
従がいまして、1億円以上の売上高の実績のない会社は、確定受注のようなものがない限り上場は無理ですし、ましてや、いまどき売上高1億円でも高額といえず、少なくとも売上高10億円以上なければ成長企業ともいえず、株式を上場する価値もないものと思われます。
いずれにしましても売上高が少ない場合にはM&Aで会社買収をし、売上高を増やす必要があります。M&Aは株式上場基準を満たす為の有効な方法とされています。
中小企業の数は、日本の企業数の90パーセント以上、雇用人員は70パーセントを占めています。日本の中小企業は、日本経済の礎であり、そのような中小企業にとって、現在、事業承継対策が大きな課題となっています。
2006年6月、中小企業庁から「事業承継ガイドライン」が公表され、政府もこの問題に本格的に取り組むと言っています。従来、M&Aは公認会計士や銀行が取り組んできましたが、本来、事業承継は法律問題がからみ法律の専門家である弁護士の得意な分野です。しかし、この問題に取り組む弁護士は少数でした。
昨今は司法試験合格者も飛躍的に増大し、事業承継を基軸とする中小企業のM&Aに取り組む弁護士が増えていますし、日弁連も研修会を開いて、この分野への進出を勧めています。
あなたは会社を売りたいということですから、まず身近にいる弁護士に相談されたらよいと思います。弁護士は公認会計士や税理士と協力して、あなたの希望に沿った買い手をみつけてくれるものと思います。
なお、中小企業向けM&Aの仲介業務をしている会社に信金キャピタル株式会社、株式会社日本M&Aセンターがありますので、弁護士は事案に応じて、これらの会社とも協力することもあるかと思います。
弁護士や上記の会社に会社売却の仲介を依頼すれば手数料がかかりますので、予めその額を聞いておく方がよいと思います。
取締役や監査役などの会社の役員が違法な行為を行い会社に損害を与えた場合、会社がその責任を追及しないことが多々あります。こうした場合、6ヶ月前から引き続き株式を有する株主が、会社に代わって、それらの違法行為をした役員の会社に対する責任を追及する訴訟を株主代表訴訟といいます。
株主代表訴訟の原告となる株主は自分に対して損害賠償金を支払えというものではなく、会社に対し損害賠償を支払えというものです。
株主がそれらの役員に対して損害賠償訴訟を提起することができるのは、書面等で会社に対し損害賠償訴訟を提起するよう請求したにもかかわらず、60日以内に会社が訴訟を提起しなかった場合です。
会社は60日以内にそれらの役員の責任追及の訴訟を提起しない場合、その請求をした株主等から訴訟を提起しない理由を求められた時は、不提訴理由書を作成し、通知しなければなりません。
※例
私は静岡市内で従業員10名程度の小さい会社を経営していますが、株主の1人で亡くなった弟の子供から、静岡地方裁判所に株主代表訴訟を提起されました。
私と弟も父の代から仲良く会社で働いていましたが、弟が亡くなってその長男が会社の株式を相続してからは、ことごとく私の経営方針に反対し、何をするにつけても文句を言ってきます。弟の長男はサラリーマンで私の会社に勤めていませんが、私が社長でいることを快く思っていないようです。
このようなもめごとはよくあります。株主オンブズマンにより、大企業の役員に対し数々の株主代表訴訟が提起され脚光をあびていますが、むしろ、中小企業の経営をめぐっての親族間や親しかった者どおしの株主代表訴訟の方が多数であるようです。
あなたの弟さんの子供は、あなたの経営を快く思っていないようですが、あなたに背任等の会社経営上の違法な行為がなければ何も心配することはありません。仮に、あなたに経営判断のミスがあり、それにより会社に損害が発生したとしても、あなたが代表取締役として、誠実かつ合理的な判断をし、その判断が経済状況等の変化により裏目に出た場合、責任を負うことはないのです。
これは経営判断の原則といわれ、判例でも認められていますので静岡地方裁判所の裁判官もこの判例を尊重し判決をしてくれるものと思います。
なお、弟さんの長男はあなたの経営を快く思っていないということですが、ただ単に自己もしくは第三者の不正な利益を図り、または会社に損害を加えることを目的とする理由で株主代表訴訟を提起したような場合には会社法により、その訴は却下されるということになっています。
いずれにしましても、ご心配であれば身近にいる弁護士に相談なされるとよいと思います。当事務所でも株主代表訴訟を取扱っていますので、ご連絡いただければ幸いです。
株主代表訴訟を提起した株主が敗訴した場合、あなたはその株主に対して損害賠償請求訴訟を提起することができます。もっとも、それができるのは、株主の提起した株主代表訴訟に何らの理由がなく、訴訟の提起が株主としての権利の濫用にあたる場合です。
あなたは株主から株主代表訴訟を提起され、その理由に心あたりがないということですから、その株主に担保提供するよう静岡地方裁判所に申立てて下さい。
この担保提供申立制度は会社法により定められているものであって、あなたの将来の損害賠償請求権を担保するものです。
もっとも、この担保提供が認められるには株主の悪意が要件になりますので、不当な嫌がらせ目的のような濫用的訴訟以外には適用がないことをつけ加えておきます。
独禁法は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」の略称であり、私たちの国の自由競争経済を支える基本法です。
自由主義経済社会においては、企業や個人による経済活動、取引活動が健全な競争原理の下で行われることが経済全体の発展に最も寄与するものであるという考え方が独禁法の基本理念です。
同業者間で相互に販売価格を決めて価格競争をしないという合意が許されるとすると、その価格は高値で安定し、消費者の利益を害することになるでしょう。
又、既存の事業者による競争事業者の不当な排除行為が合法的なものとされれば、市場に新規参入しようとする事業者はその機会を奪われ、競争がないことによって価格は高値で安定し、これも消費者の利益を害することになるでしょう。
独禁法の目的は上記のような事態が生じないように、公正かつ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇用及び国民実所得の水準を高め、消費者の利益を確保することにあるといわれています。
この意味で独禁法は経済憲法とも称され、大企業であれ中小企業であれ、経済活動を行う者は誰もが守らなければならないのです。
あなたの考え方は間違っています。あなたがしていることは、入札談合といわれるものであって、独占禁止法で禁止されている不当な取引制限に該当するばかりではなく、刑法上の犯罪行為です。
あなたの会社がそのようなことを続けていると、やがて公正取引委員会に摘発され、排除措置命令を受け、高額な課徴金を徴収されることになります。そのようなことになれば、会社は信用を失い倒産するような事態になるかもしれません。
中小企業に対する課徴金は、製造業等(建設会社を含む)にあっては年間売上高の4パーセント、小売業にあっては年間売上高の1.2パーセント、卸売業にあっては1パーセントとされていますので、利益の大半が課徴金として持っていかれることになります。
いずれにしましても、公共工事における入札談合は税金の無駄遣いを助長することにもなり許されることではありません。適切な競争をして受注できなければ、他の経営方法で会社の運営をした方がよいと思われます。
このたびの課徴金減免制度は、アメリカやヨーロッパ、韓国で実施されているリニーエンシーを導入したものであって、自主的に入札談合、価格協定等のカルテル行為を公正取引委員会に申告してきた者に対して課徴金を免除、又は減額するという制度です。
この申告にも制限があって、1番最初に独占禁止法違反行為を申告した者は課徴金の全額の免除、2番目に申告した者は50パーセントの減額、3番目に申告した者は30パーセントの減額がなされることになっています。
このように上位3社に限定され、早いもの勝ちになっています。この申告の方法は、順位を確認する必要からFAXに限られており、FAX番号は03-3581-5599です。
社名を明らかにして、違反行為の概要を所定の様式により作成した報告書を公正取引委員会にFAXすることによって仮順位を取得できます。
その後、より詳細な報告書や資料を提出し、これを公正取引委員会が受理した場合、順位が確定し、何番目の申告者であったか公正取引委員会から申告者に通知されることになっています。注意しなければならないことは、課徴金が減免される場合でも、当然に刑事責任が免責されるということにはなっていません。
しかし、公正取引委員会は公正取引委員会に対して、立入検査前に最初に独占禁止法違反事実を報告してきた事業者とその役員や従業員について、刑事告発を行わない旨公表していますので、事実上、刑事免責がなされているともいえます。
いずれにしましても、独占禁止法に詳しい弁護士に相談され、慎重に対処する必要があります。当事務所でも公正取引委員会への課徴金減免申請を取扱っていますので、ご相談いただければ幸いです。
なお、課徴金減免申請の様式は、公正取引委員会のホームページに掲載されていますので、これをダウンロードすればよいと思います。
※例
私はある製品の販売を業とする小さな会社を経営しています。メーカーは「メーカー小売希望価格の5パーセント引き以内の価格」で販売して欲しいと言っています。
私の会社では10パーセント引きをしてその製品を売っていたところ、メーカーから出荷を停止されてしまいました。どうしたらよいでしょうか?
小売業者である、あなたの会社はその製品の販売価格を自由に決定できます。メーカーが製品を販売するあなたの会社に対して販売価格を指定することは再販売価格の拘束であり、独占禁止法が禁止する不公正な取引方法に該当し無効です。
書籍や新聞等については、例外的に再販売価格の拘束を行っても違法にならないとされていますが、これ以外については禁止されています。確定した価格だけではなく、あなたの会社にメーカーが指示したように「メーカー小売希望価格の5パーセント引き以内の価格」と許容範囲を定めて拘束する場合も再販売価格の拘束に該当するといわれています。
あなたの会社はメーカーの独禁法違反行為による被害を受けているのですから、メーカーに対し再出荷をするよう請求して下さい。それでもメーカーが出荷しなければ、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適切な措置をとるように請求をして下さい。
公正取引委員会は、その事件について、いかなる措置をとったか、あるいは措置をとらなかったかをあなたの会社に通知することになっています。
いずれにしましても、独禁法に詳しい弁護士に相談をした方がベターだと思います。当事務所でも公正取引委員会に対する措置請求を取扱っていますので、ご相談いただければ幸いです。
※例
私は静岡市内で家具を製造する小さな会社を経営しています。この会社は私の親の代からの会社で私が社長をしているといっても、私の兄弟や甥、姪に株式が分散されており、私の持株は28パーセント程度です。
長年、私の長男が会社に貢献し、私は長男を会社の後継者にしたいと考えていますが、今からどのようなことをしておけばよいでしょうか?
事業承継におきましては、相続税や贈与税対策に目が向きやすいのですが、長男に円満に事業承継するには株式の円滑な承継が何よりも重要です。とりわけ、特別決議に必要な3分の2の株式を有していることが大切で、この株式を後継者に譲渡してあげれば経営も円滑にいくものと思われます。
残念ながら、あなたの会社の場合は親の代からの経営で株式が親族間に分散されています。今は、株主である親族があなたを信頼し、経営も円滑にいっているのだと思いますが、経営者が代わればどのようになるかわかりません。
はなはだ困難なことではありますが、あなたはすぐに分散した株式を集中する必要があります。一度、分散した株式を集中させるには、経営者であるあなた個人が任意で取得する方法、あなたの会社が自社株式を買うことにより任意に取得する方法(金庫株)等がありますが、いずれも株主である相手方の同意が必要です。
仮に、相手方が売却に同意したとしても、株式の価格を高く言ってきたら交渉は難航するでしょう。こうしたことを考えますと、一度分散した株式を集中させることは一般的にみて非常に困難でありますので、日頃から株式の集中を考えておくことが大切です。
※例
会社の後継者のために生前贈与をしたいのだが、私は静岡市内である薬品製造会社を経営しています。この会社は従業員が50人足らずの小さな会社ですが大きな利益をあげています。
私は会社の事業に貢献している次男を、私の死後、会社の後継者にしたいと考えています。ただ、現在、次男に株式等の財産を生前贈与するとなると長男との間がうまくいかなくなることが予想され、それも私にとっては避けたいことです。
どのようなことを心がけていたらよいでしょうか?
中小企業の場合、株式上場されている会社と異なり、その経営者の大半はオーナーでもある為、事業承継は、オーナーの地位の承継を意味します。この事業承継におきましては、オーナーが所有する株式、その他の事業用資産が後継者に承継されることが重要です。
さらに、あなたの次男のように会社経営に多大に貢献している場合には、それが正当に評価され、その貢献に相当する資産が後継者に取得されるよう配慮されなければ後継者のやる気は高まらないでしょう。
あなたは生前贈与等の措置は子供の間の仲を裂くことになり避けたいとのことですので、まず遺言をしておくことを勧めます。この遺言も少々費用はかかりますが、公証人が作成する遺言公正証書にしておくことが必要です。
その際、あなたの生前の意思が、死後、確実に執行されるよう遺言執行者には専門家である弁護士を指定しておく方がよろしいかと思います。
あなたが遺言するには、株式やその他の事業用資産を後継者である次男に相続させるのはよいのですが、遺留分のことも考え長男等の他の子供にも他の財産を相続させる必要があります。
遺言がなされずに相続が開始された場合、金銭債権等の分割債権は法定相続分によって当然分割となります。このために、すべての相続人が合意しない限り、遺産分割の対象とならないとするのが最高裁の判例です。
あなたのように中小企業のオーナーの場合には特に不都合であり、あなた名義の預貯金は、当然分割となり、各法定相続人が単独で、自己の相続分相当額の払戻しを請求できます。中小企業にとりまして社長個人の預貯金も重要な資金繰りの役割を担っていますので、これが流出してしまいますと経営上も支障が出ます。
又、あなた個人が会社に貸付金がある場合、これも当然分割となりますから、各相続人は会社に対し、相続分に応じて貸金返還請求することができ、会社の経営が困難になります。
さらに、あなたの会社の株式が相続によって準共有された場合、最高裁判例は株主権を行使すべき者は、共有持分の過半数をもって定めることとしていますので、長男やその他の相続人が次男と対立すれば、次男は困ることになるでしょう。
株式を相続する場合は、法定相続分に対応する数の株式を相続するわけではないのです。このように法定相続による遺言分割は次男への円滑な事業承継を困難にしますので、遺言しておくことが不可欠です。
なお、遺言をしておけば、あなたの死後、もめごとがなくなり、子供達の付きあいも円満になるかもしれません。
※例
私は資本金1000万円の冷蔵倉庫業を営む株式会社の代表取締役をしていましたが、70歳になり長男にその地位を譲り、平の取締役になりました。
しかし、長男の経営は杜撰で、先日、株主総会は勿論ですが取締役会の承認を得ずに独断でA社に冷蔵倉庫を売却してしまいました。冷蔵倉庫は会社の主たる営業資産でありまして、今後の会社の経営に重大な支障を生じます。
どうしたらよいでしょうか?
本件の場合、A社に対する事業承継ではありませんので、株主総会の特別決議は必要ありません。しかし、会社法では重要な業務執行につきましては代表取締役にその決定を委任できないとされていますので、会社にとって重要な財産に該当する資産の譲渡行為は代表取締役の意思のみでできず、必ず取締役会の決議を経なければなりません。
あなたの会社は冷蔵倉庫会社なので冷蔵倉庫がなければ経営を続行することができなく
なると思われますので、A社への売却は重要な財産の処分にあたります。
従って、取締役会の決議を経なかった冷蔵倉庫の売却は無効ということになりますが、A社に対しましては、原則的に無効を主張できません。
会社法上、代表取締役は、業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有することになっており、最高裁判例(最判昭和40・9・22)は、相手方(A社)が取締役会の決議を経ていないことを知っていたか、過失によって知らなかった場合にのみ、無効であるとして、第三者を保護しています。
本件の場合、A社に上記の事情が存在すれば冷蔵倉庫の売却は無効になりますが、そうでなければ有効となってしまいます。このような事態が発生しない為にも取締役会設置会社では会社法の規定どおり定期的に取締役会を開催し、取締役の合議で会社の経営をする必要があります。
※例
私が取締役をしているビルの清掃を営業目的とするA株式会社は、資本金が3000万円で、直近の貸借対照表上の資産の総額は4000万円です。毎決算期の利益は赤字にならない程度でほとんどなく、銀行からの借入金も1億円程あります。
A社は私以外に2名の取締役がおり、その内のBが代表取締役をしていました。Bは何かと独断的で、先日、取締役会の承認を経ることなくC銀行から3000万円の借金をしてしまいました。ほとんど利益をあげていない現状では3000万円の元利金の返済は苦しくA社の経営を圧迫することになります。
どうしたらよいでしょうか?
会社法ではQ21の重要な財産の処分及び譲受けと共に、多額な借財などをあげて、取締役会専権事項とし、個々の取締役の決定に委任することができないとしています。
本件のC銀行からの3000万円の借金がA社にとって多額な借財ということになれば、A社は取締役会の決議のないことを理由に無効が主張できる余地があります。
多額な借財にあたるか否かの判断は、判例上、当該借財の額、その会社の総資産及び経常利益等に占める割合、当該借財の目的及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮してなされるべきだとされています。
本件のA社は資本金が3000万円、総資産が4000万円あるとのことですが、既に銀行からの借入金が1億円程度もあり、毎期の利益もほとんどないとのことですので、前記判例の趣旨からしますと、3000万の借金でもA社にとっては多額な借財ということになり取締役会の承認が必要になるものと思われます。
従がいまして、A社はBが取締役会の承認を経ることなくC銀行から多額の借財をしたとして、同銀行に金銭消費貸借契約の無効を主張できますが、この場合もQ21と同じくC銀行が取締役会決議のないことを知っていたか、過失によって知らなかった場合にのみ限定されます。
いずれにしましても、他の取締役に内密にした多額の借財は会社にとって有用な行為に使われることがありませんので、このようなことのないよう零細な株式会社であっても、会社法の規定するとおり取締役会を定期的に開催し、取締役間の意思を一致して経営にあたらなければなりません。
監査役は、資本金や負債の大小にかかわらず、原則として会計監査権限と業務監査権限を有しています。
(会社法381条)監査役は、会社の経営に不正がないか、又、コンプライアンスに違反することがないかを監視する重要な機関ですが、小規模で閉鎖的な会社では、このような人材を求めることが困難であるので、監査役を必ずしも設置しなくてもよいことにしました。
メリットとしては、上記のように人材の確保に悩むことがない点ですが、デメリットとしては、株主の監督是正機能が大幅に強化されていることです。
すなわち、株主は、裁判所の許可を得ることなく、取締役会の議事録を閲覧することができますし(会社法371条2項)、株主は、所定の場合に取締役会の招集を請求し、ないしは自ら取締役会の招集を請求することができます(会社法367条1項、3項)。
さらに、株主は、自己の請求又は招集によって開催された取締役会に出席して意見を述べることもできますし(会社法367条4項)、定款に基づく取締役の過半数の同意による取締役等の一部免除制度は適用されません(会社法426条1項)このように、監査役を置かないかわりに株主の権限を強化しており、経営に対する株主の関与の余地が大きくなり、会社経営者からみれば、これらの点がデメリットかもしれません。
三角合併とは会社の合併の方法の1つで、吸収合併を行なう時に用いられる方法です。親会社の甲社が子会社の乙社に対し、吸収される丙社の株主に対する合併対価として甲社株式を付与し、乙社が丙社の株主にそれを交付します。
丙社が乙社に吸収されると同時に丙社の株主は甲社の株主になりますので、この甲、乙、丙3社の関係をみて三角合併と言っているのです。日本の大企業は優秀な技術と資産を有しながら、株式の時価総額が低いと言われています。
このような企業は、外国資本の大企業にとって魅力的で、今後は、これらの会社をターゲットとして敵対的買収が増えるのではないかと心配されています。
甲社は自社の株式を発行するだけで、何の資金も要せず、丙社を自己の傘下におさめることができるのであって、何故、会社法がこのような合併を認めたのか疑問に感じます。
いずれにしましても、中小企業の場合、外国資本のターゲットにされることはないかもしれませんが、技術力や含み資産のある中小企業でも三角合併の方法を利用して、友好的な買収をし、企業を発展させることは可能だと思います。
※例
当社の従業員持株会が自社株式の取得をしたいと言っていますが、購入資金が不足しているようです。
当社は株式市場に上場はしていませんが、将来の上場を考えると従業員持株会が当社の株式の多数を保有してくれれば、安定株主として何よりも安心です。
従業員持株会の自社株式の購入資金を当社が貸付けてもよいですか?
又、それができない場合、従業員持株会が銀行から取得資金を借入れるについて、当社が保証をしてもよいですか?
会社が購入資金を従業員持株会に貸付けることは法的に問題はありませんが、会社による自己株式の取得であると認定されかねませんので、やむおえず、購入資金を貸付ける場合は、会社の計算による株式取得でないことを明白にするため、金銭消費貸借契約書を作成する必要があります。
この際、公証役場に行って公証人の確定日付を得ておけばベターでしょう。しかし、会社が従業員持株会に対して自社株式の購入資金を貸付けることはお勧めできません。
※例
従業員持株会に自社株式の購入資金の貸付けをしない場合、従業員持株会が、銀行から自社株式の購入資金の融資を受けるについて、当社が保証をしてもよいでしょうか?
従業員持株会は民法上の組合とされていますが、権利能力なき社団とも考えられています。しかし、いずれの考え方をとるにしても、従業員持株会には借財能力はあります。
従業員持株会が組合とされる場合、銀行から借金するについては、従業員持株会の会員の過半数の同意を必要とします。(民法670条1項)従業員持株会の銀行借入れについて会社が保証することは原則的に問題ありません。
但し、保証限度額は、従業員持株会が返済できる範囲内の合理的な金額としなければなりません。あまり過大な金額の保証をすると、会社が保証を通じ自己株式の取得規制を逸脱するものと指摘されることがあります。
又、万一、従業員持株会が返済できなかった場合、会社が損失を被り、取締役が個人責任を追及されることがあります。
2001年6月以前の商法は、会社が自己株式の取得、保有をすることを原則的に認めていませんでした。例外的に株式の消却をする等の一定の場合のみ、自己株式の取得、保有が可能でしたが、その処分も遅滞なく行われなければなりませんでした。
2001年6月、商法が改正になり、機動的な組織再編成、株式の相互持合いの解消の需給調整のため、敵対的買収に対抗するためといった理由から、自己株式の買受けが認められました。2006年5月施行の現行会社法では、自己株式の取得はさらに自由になり、取得手続が緩和されています。
現行会社法の自己株式取得の概要は次のとおりになっています。
1 定時株主総会決議だけではなく、臨時株主総会を開催して自己株式の取得が可能になりました。
2 未上場会社を中心に、株主総会の普通決議で、譲渡人を定めずに株主全員に譲渡機会を与える新たな有償取得手続を導入しました。
3 自己株式の有償取得の財源規制が、剰余金の配当として一括して、統一的に財源規制が設けられました。
4 自己株式に係る権利のうち、残余財産分配請求権等の自益権の取扱いが明文化されました。
このように自己株式の取得、保有について、小泉改革の流れの中で緩和されてきましたが、あまり緩和し過ぎると、資本が実質的に払戻しされることと同等視され、資本充実の原則に反することになり、会社債権者を害することにもなります。
自己株式の有償取得は、株主総会の決議に基づき行うこととされています。(会社法156条)又、この決議は定時株主総会でも、臨時株主総会でも可能で、特別決議ではなく普通決議でよいのです。
従がいまして、あなたの会社は、株主総会の普通決議があれば、いつでも自己株式を有償で取得することができます。
なお、上場会社等では、定款の定めにより、取締役会決議で取得することが可能です。(会社法165条2項)
自己株式の取得価額の総額は、自己株式の買受けが株主に会社財産を払い戻す性質を有することから自己株式の取得の効力の生ずる日の分配可能額を超えることができないとされています。(会社法461条)
そして、具体的には留保利益等の額から当期に配当した額等を控除する方法で計算されることになっています。(会社法446条、461条)自己株式の取得価額の上限につきましては、会社法446条、461条、計算規則177条、178条、186条によるものとされていますので、あなたの会社の顧問税理士や公認会計士に計算してもらうとよいでしょう。
自己株式を取得するあなたの会社は未上場だということですから、一般的に相対取引(あいたいとりひき)となり、株主総会の特別決議が必要となります。(会社法156条、160条1項、309条2項2号)
特定の株主から相対取引によって自己株式を取得する場合には自己株式取得の議案に、株式の種類、数、交付金銭等の内容、総額、株式を取得することのできる期間(会社法156条1項)に加え、特定の者(会社法160条1項)及び特定の者以外の株主から特定の者に自己も加えた議案に変更するように請求がありうる旨(会社法160条3項)を記載しなければなりません。(会社法160条2項)
このように株主平等の原則を徹底するために、会社法は、特定株主以外にも他の株主から自己も売主に加えて欲しい旨の請求があった場合、会社はこの株主も売主に加えなければいけないことになっています。
なお、特別決議にあたりましては、売主たる株主の議決権は、定足数には算入されますが、売主たる株主は特別利害関係を有していますので、その決議においては議決権を行使することはできません。(会社法160条4項前段)
但し、株主が1人の会社にあっては決議ができなくなることから、この場合は例外的に議決権を有することとされています。(会社法160条4項但書)
※例
ある特定の株主の所有する私の会社の株式100株を取得することにし、株主総会に議案をあげましたが、他の株主から所有する100株を買取って欲しいとの売主追加の変更議案請求がありました。
私の会社は資金の関係上、100株しか自己株式を取得できません。このように売主が2名になった場合、どのようにしたらよいのですか?
売主が2名となり、あなたの会社の取得予定株式総数が100株と変わらず取得予定数量より売却希望数量の方が多い場合、あなたの会社は2名の株主を平等に扱わなければなりません。
取得予定株式総数は100株だということですから、売主の売却希望株数で按分し、2人の株主から各50株づつの取得にする必要があると思います。
子会社による親会社株式の取得は原則として禁止されています。(会社法135条1項)但し、例外的に会社法は次の①から④の場合、その取得を認めています。(会社法135条2項1号ないし5号、会社法施行規則23条)
①株式交換、株式移転、会社の分割、合併または他の会社の事業全部の譲受によるとき
②株式交換、株式移転、吸収分割、合併により親会社株式を取得する場合
③株式交換、合併、吸収分割の対価として、親会社株式を交付するために、対価として交付すべき当該親会社株式の総数を超えない範囲において当該親会社株式を取得する場合
④会社の権利の実行にあたりその目的を達成するために必要なときこのような子会社による親会社株式の取得はあくまでも例外的なもので、子会社は相当な時期に親会社株式を処分しなければなりません。(会社法135条3項)
又、子会社が所有している親会社の株式については議決権がありません。(会社法308条1項)
※例
自己株式の有償取得に際し、Q29の取得財源規制に違反した場合の取締役の民事上の法的責任について教えて下さい。
Q29でお答えしましたように、株主総会で決議される自己株式の取得による交付金銭の対価の総額は分配可能額の範囲内とされています。(会社法461条1項2号、会社法156条1項)
自己株式の有償取得の結果、株主総会の決議の日における分配可能額を対価の総額が超える場合、総会議案を提案した取締役は、その自己株式の取得の効力の発生する日において分配可能額を超えて交付した金銭につき支払義務を負います。(会社法462条1項1号イ)
この取締役の責任は、会社法において過失責任とされていますので、取締役が無過失であれば支払義務を負担しません。
なお、分配額のうち、分配可能額までの金額について、免責規定をおいています。(会社法462条3項)
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